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ベータ線(ストロンチウム90やトリチウム)を測れる市民測定所ができたそうです

全国市民測定所ネットワークグループから転載します

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★市民放射能測定所「たらちね」ベータラボ開設お披露目会参加報告

2014年11月2日、いわき市にある市民放射能測定所「たらちね」で、全国の市民測定所念願のベータ線核種測定実験室(以下ベータラボと略記)が誕生した。
これで、日本政府も自治体もやりたがらないSr-90やトリチウムの測定が市民測定所で可能になった。画期的なことである。

お披露目会の参加者は40人ほど。
「たらちね」を支援している方々が全国にいて、大きな期待を持ってこの測定所を育てていることが、来賓として挨拶された10数名の方々の話の内容からわかった。
1000万円のカンパをしてラボ開設に貢献した山田養蜂場からも若い広報部の女性職員が来ていた。最初にあいさつしたDays Japanの広河隆一氏が、山田養蜂場がDays Japanの応援をしてきたことを紹介していたので今回だけではないことがわかった。
他にも、「たらちね」で甲状腺検診を続けている北海道がんセンター名誉総長の西尾さんや、常総生協の柿崎さん、NCC(キリスト教協議会)ドイツスイス担当委員会の菊地さんなど幅広い人脈がつながっていることも分かった(高木基金からは菅波さんがあいさつした)。

これまでベータラボ開設が難しかったのは、測定装置が高価であったこともあるが、最大の障害は有害ガスが発生するサンプルの酸化分解処理をするためのドラフトチャンバー(局所排気実験台)の設置された実験室の確保が難しかったからであった。
今回は、「たらちね」が間借りしているビルの別室を化学実験室仕様に改装し、ドラフトチャンバーを装備することが出来た。
有害ガスは、水で洗浄されてから廃棄、洗浄水は中和処理してから排水する。
サンプルを灰化するための電気炉や電気乾燥機、純水製造装置も装備された。微振動によるノイズを防ぐためのストーンテーブルの上に2台の電子天秤が置かれている。
サンプルの酸化分解のための最新鋭のマイクロウェーブ加熱分解装置も備えられている。
サンプルに濃硝酸を加えて密封し、マイクロウェーブをかけると30気圧120度の条件で酸化分解が進行する。
実験台が1台しかないのはスペースが限られているから仕方がないのかもしれないが、ちょっと残念
なところ。
専任の分析スタッフが3人もいるのであるから、フル稼働するためにはもう一台の実験台が欲しいところである。

肝心のベータ線核種測定装置は、液体シンチレーションカウンター(略称:液シン)である。
他にもベータ核種を分析する方法として低バックグランド・ガスフローカウンターを用いる分析法もあるが、「たらちね」は液シン法を選択した。トリチウムとストロンチウム90の両方の測定ができる(同時にではないが…)。
さらに、以下に述べるように前処理期間が大幅に短縮できることが長所である。
購入した測定器は、フィンランド・Hidex社製のHidex30SL全自動TDCR機構搭載スーパー極低レベル液体シンチレーションカウンターであり、Y-90のベータ線によるチェレンコフ放射光を測定することによって、前処理時間を大幅に短縮することが出来ることがうたい文句である。

Sr-90は半減期28.8年で最大エネルギー0.5459MeVのベータ線を出して崩壊し、娘核種であるY-90となる。
Y-90は半減期64時間で最大エネルギー2.28Mevという高エネルギーのベータ線を出して、Zr-90となる。
従来法では、Sr-90からZr-90へと進む核崩壊の放射平衡に達するまで待ち(2週間~この工程をミルキングという)、半減期の短いY-90のベータ線を測定することによって、Sr-90の定量を行っていた。
これに対してHidex30SL(チェレンコフ法)は、液体シンチレーション信号だけでなく、Y-90のチェレンコフ放射光を測定する。
チェレンコフ放射光とは、荷電粒子(この場合は、高エネルギーの電子すなわちY-90のベータ線)が物質中を光速以上の速度で通過するときに放射される光である。
Sr-90とY-90のベータ線による合算された液体シンチレーション信号から計算される放射能からチェレンコフ放射光から計算されたY-90存在量を引き算すれば、Sr-90の存在量を求めることが出来る。時間をかけて放射平衡まで近づけばY-90が増えてチェレンコフ放射光も増大するが、そこまで時間をかけなくともわずかに1日から数日おけば、十分にSr-90を定量することが出来ることがメーカー作成のカタログにデータで示されている。
さらに、光電子増倍管(フォトマル)を3本備えて、装置下部に取り付けられたプラスチックシンチレーターからの光を2次元解析して、宇宙線などによるバックグラウンドを識別してサンプルからのベータ線による信号だけを取り出すことが出来る仕様になっている。

さて、ここまではメーカーによるカタログ仕様であって、実際に必要な感度と検出限界が得られるのであろうか。
測定アドヴァイザーである天野さん(原研OB)によれば、トリチウムについては、1時間測定で検出限界が数Bq/Lで測定が出来ることが確認されたそうである。
オートサンプラーには40本のバイアル瓶を入れることが出来るので、水試料のトリチウム測定は、かなりのペースで行うことが可能であろう。
Sr-90についてはこれから検討を進めていき、来年4月からの本格稼働に備える予定だそうである。
カタログ仕様では、Sr-90の検出限界は、サンプル10gに対して10Bq/kgだとのこと。
これではとても足りないので、電気炉による灰化やマイクロウェーブによる酸化分解、さらには、特殊フィルターによる濃縮などの前処理によって、検出限界を何ケタか下げる工夫をしなければならない。来年4月からの本格稼働まで、様々な工夫や実験を行って、精度の高い測定が出来るようにするとのことであった。

生えかわる乳歯を集めて、そのSr-90含有量を測定することによって、Sr-90摂取量を推定しようという試みは核実験の頃から盛んにおこなわれている。
大気圏内核実験期の後半である1960年代前半に日本人の乳歯の中のSr-90は最大値を示し、0.3Bq/gCa(カルシウム1g当たりのベクレル)であったが、その後低下して現在では0.02 Bq/gCa程度になっている。ここから再上昇するかどうかを調べるためには、検出限界は0.01~0.05Bq/gCaを確保する必要がある。
乳歯1本を分析してこの検出限界を確保するためには、濃縮という手段が使えないだけに、新たな工夫が必要である。
もしかすると、液シンを選択した時に勝負が決まっていた可能性もある。
スイス・バーゼル州立研究所に50本ほどの乳歯を送ってSr-90を測定してもらったデータでは、検出限界は0.05Bq/gCaが確保されていた。この研究所では、低バックグランド・ガスフローカウンターによって測定する従来型の方法に工夫を加えて、ミルキングの時間を4日間程度まで短縮して測定を行っている。
福島原発事故由来のSr-90を摂取・吸引した子どもたちの乳歯が生えかわるまで1~2年の余裕があるので、この間に様々な工夫から検出限界を下げることを期待したい。

新たに採用された3名の測定スタッフのうち、第1種放射線取扱主任者免許を持っている方に、このような分析をやった経験があるかどうかを尋ねてみたところ、原研の下請け会社の社員としてこの種の業務に従事していたとのことであった。
また、帰り際に天野さんが、かつて原研で働いていたことを振り返って、「せめてもの罪滅ぼしと思って頑張ります」と言っておられたのが印象に残った。
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